第96回 鈴木裕太さん 上

1990年生まれの仙台出身です。学歴がスゴいです。東京大学理科一類に入学し、3年次より理学部、同大学院の新領域創成科学研究科に入り、2018年3月に科学博士となっています。現在は東大大学院で学生の指導に当たっています。ゲノム解析が専門だそうです。

2019年3月に雷に打たれたような、思いがけない恋愛で、この思い出だけで、この一生に後悔無いほど幸せだ!という気持ちと同時に、この時間を手放したくない、離れたくない、という叫びになります。

理不尽な激しい煩悩に、さあ困ったことになったと分かったので、まずは節度ある正しい生活を知るためにギリシア哲学を漁ったり、精神分析の立場から愛とは何かを学ぼうとしたり、その過程で、いくぶん自分を客観視できたような気持ちになってきます。

しかし、いつか必ず、必ず来る別れを受け入れることは、どうしても出来ません。どう考えてもどちらかがそのうち死ぬ道理は明らかでも、情が承知してくれません。

根本の問題が、そんな不条理な自分の心にあるのだと明らかになっていったころなので、通仏教のお示しが素直に入ってきます。『大乗起信論』などを同年夏に読み、煩悩は無明から起こってくるという理がしっくりきました。宿縁が余程厚い人です。

8才時に祖父の葬式で正信偈を聞き、始めの十数句は暗誦していたそうです。2019年の夏の終わりにかけて、ふと手にとった『教行信証』で、親鸞聖人は「知るべし」という言い切りを自信をもって連発されているということが、印象に残ります。『歎異抄』ではなく『教行信証』を手にとるから驚きです。

この頃はまだ、ご信心とやらがわかるところまで勉強してみるかな、程度の気持ちでした。嶋田さんの「私の白道」のブログを見つけ、そこに綴られる人生をかけた求道に胸を打たれます。大きなご縁となり、他人事とは思えず、獲信の場面では涙が止まりませんでした。

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